よく、酒を飲んで酔った勢いであんな暴言を吐いた、とか、酔っぱらった勢いで殴った、とか。
「あれは、私の本心ではありません。今は反省してます」って言うけど、あたかも酒のせいで、本来の自分ではない人格が表れて非道徳的なことをしたというロジックは違うそうだ。
実際のところ、酒の影響というのは免罪符になりえるのか?
酒の影響は、人の倫理観に変化を与えることはないと、検証したいくつかの研究を、英国ブラッドフォード大学の心理学講師Kathryn Francis氏は示している。
実験① ウォッカを大量に摂取させて、酔う前との変化
なかなかアグレッシブな研究だが、この実験では酔った被験者たちに、人の感情を表した表情の写真を見せてどのように感じるかという共感力や感情移入の反応を調査している。
その結果、酔うほどに被験者たちは悲しみの表情を面白がったり肯定的な印象を持ち、幸せそうな顔には否定的な感情を持つようになったそうだ。
これは酔うと、他者への感情移入が阻害され、共感したり、理解を示す能力が弱まることを示していると考えられる。
実験②トロッコ問題という思考実験
5人の建設作業員が作業している線路上に暴走トロッコが走っています。作業員はトロッコの接近に気付いておらず、あなたは歩道橋の上からそれを確認している状況です。あなたの目の前には、太った見知らぬ男性が立っており、彼を歩道橋から線路上に突き落とせば、暴走トロッコを止めて5人の命を救うことが出来ます。あなたはどう行動しますか?
トロッコ問題に対してどう行動するのがより道徳的かという問題ではなく、酔う前と酔っ払った状態でこうした道徳問題に対する行動に変化が起こるかどうか? という部分を調査している。
その結果、道徳的な考えによって左右されると考えられる行動には、酔った場合でも変化が現れなかった。
酔った勢いで、太った男性を線路に叩き落とすとか、酔うと行動をためらうというような変化はなく、酒を飲んで酔っ払っていても道徳的な判断に影響はなかった。
こうした研究の成果は、アルコールが性格や人格を変えるという信仰が誤りである可能性を示している。酔って暴力を振るうなどの不道徳な行動は、酒の影響で現れるわけではなく、もともとその人の道徳観がその程度であったということを明らかにしているに過ぎない。
以前ネット上で「酒が人をアカンようにするのではなく、その人が元々、アカン人だということを酒が暴く」という文言が流行ったことがあったが、どうやらこれは科学的に正しいことを言っていたようだ。
酒を飲んでセクハラする人も、そこら辺で平気で吐く人も、それは酒のせいではなく、元々そういう道徳観の人なのだ。
ただし、酒の飲みすぎは良くない。年末年始は飲み会も多いが飲みすぎは気をつけよう。
飲んでも、飲まれるな。
これも、ウェルビーイング!
コメント