ヴィパッサナー瞑想では、「サティ(気づき)」が最も大切だと言われる。そのサティを日常生活で実践する方法として、私は「実況中継」という考え方がとても分かりやすいと思っている。
実況中継とは、頭の中で起きていることを評価や解釈を加えず、そのまま実況することである。
例えば朝起きたら、「眠いな」ではなく、「目が開いた」「布団から起き上がった」「足が床についた」と実況する。

コーヒーを飲む時も、「コーヒーの香りがする」「温かさを感じる」「苦味が口に広がる」と実況する。
仕事中なら、「メールを開いた」「少し焦っている」「肩に力が入っている」「深呼吸をした」と実況する。
ポイントは、「良い」「悪い」「こうあるべき」と判断しないことだ。ただ事実を見つめるのである。
人の心は放っておくと、すぐに過去と未来へ旅に出る。
「あの時ああ言えばよかった」
「明日の会議は失敗しないだろうか」
「老後は大丈夫だろうか」
こうした妄想は、ほとんどが今この瞬間には存在しない。頭の中で作り出した映画を見ているようなものである。そして、その映画に振り回されて、不安や怒り、後悔が生まれる。
そんな時こそ実況中継である。
「不安が湧いている。」
「未来のことを考えている。」
「心臓が少し速くなっている。」
「呼吸が浅くなっている。」
こうして気づいた瞬間、人は妄想から現実へ戻ってこられる。
私はランニング中にも実況中継を試すことがある。
「右足が着地した。」
「風が頬に当たる。」
「少し息が上がってきた。」
「汗が流れている。」
すると、タイムのことも仕事のことも忘れ、ただ走ることそのものに集中できる。不思議と心が静かになっていく。
実況中継は特別な修行ではない。歯を磨く時も、食事中も、電車に乗っている時も、誰でもすぐに始められる。
私たちが生きている場所は、過去でも未来でもない。「今ここ」しかない。その「今ここ」に戻してくれる最も簡単で効果的な方法が、実況中継なのである。
今日一日だけでも、自分の心のアナウンサーになってみてはいかがだろうか。気づく力が育てば、妄想は少しずつ静かになり、目の前の人生が驚くほど鮮やかに見えてくる。
これも、ウェルビーイング!



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