お亡くなりになったマラソンの監督、小出義雄さんがお話ししていたことです。
ご存じのように2000年のシドニーオリンピックで高橋尚子選手に金メダルをもたらした名伯楽です。
実は、高橋選手の先輩に同レベルの実力を持った鈴木博美選手がおりました。
アテネ世界陸上で金メダルをとった実力者です。
小出監督は、二人に「お前は必ず世界一になる」と言い聞かせていたそうです。
ある日、鈴木選手が血相を変えて、小出監督の下を訪れました。
「監督は私に世界一になるといっていたが、Qちゃん(高橋尚子)にも言っていた」と言って、カンカンに怒っているのです。
高橋選手に対する嫉妬だったのです。
実は、当時の実力としては、鈴木選手の方が上でした。
もし、小出監督の勧めにしたがったマラソンに転向していたら、オリンピックで金メダルを2つ取っていたと述懐していました。
しかし、鈴木選手が小出監督のアドバイスに従って、マラソンに転向するには10年かかり、結果は高橋選手に大きく差をつけられてしまいました。
小出監督によれば、運というのは誰もが持っているといいます。
ただ、多くの人がそれに気づかず、逃してしまっているというのです。
高橋選手が成功した要因は、何よりも素直で、明るく、そして嫉妬しないところだと指摘しています。
当時、有森裕子選手が活躍したり、鈴木博美選手が健闘している姿を見て、「有森さん、良かったですね」「鈴木さん、良かったです」と素直に喜んで、「私も頑張ります!」と言って、決して嫉妬せず、むしろ他人対する称賛を自分のエネルギーに変えてしまうという持ち主だったようです。
小出監督に言わせると、
「人間、嫉妬しているうちは本当の福は回ってこない」
ということです。
高橋選手のように、たとえライバルであっても「よかったね」と心から喜んであげて、それを自らの発奮材料にしてしまうくらいでないと、本当の福は回ってこないということです。
これも、ウェルビーイング!