この概念は、ハーバード・ケネディ・スクールで25年間リーダーシップ論の教鞭をとり、「最も影響を受けた授業」に選ばれ続け、IBM、マイクロソフト、マッキンゼー、世界銀行などのアドバイザーも務めるロナルド・ハイフェッツ氏が提唱したこと。
彼は、既存の方法で解決できる問題のことを「技術的問題」(technical problem)、
既存の方法で一般的に解決ができない複雑で困難な問題のことを「適応課題」(adaptive challenge)と定義しました。
要するに目に見える技術や知識で解決できる問題が「技術的問題」で、技術や知識だけあっても解決できない問題が「適応課題」。
簡単な例では、自転車のパンクを直す方法は「技術的問題」。修理のやり方がわかっているから。
一方、例えば子供が学校を転校して、新しいクラスに入ってみんなとうまくやっていくには、みんなのことをよく知ったり、自分の考え方を変えたりする必要がある。これが「適応課題」。
それぞれの問題には違うアプローチが必要で、技術的問題は正しいやり方を見つけることが大切で、適応課題は新しい方法を考えたり、少し自分を変えることが求められることが多い。
例えば、「部の方針に対する部下の提案や意見を傾聴することができない」という課題を技術的課題の側面で捉えると、「傾聴において重要な『共感』の概念理解がない」「傾聴の方法に習熟していない」という仮説が立てられる。➡技術的課題はスキルを習得することで解決できる。
一方で、適応課題は社員自身の考え方や価値観を変えることが必要になる。
技術的課題は認知がしやすく、知識や技術を習得することで比較的早く解決することができるけれど、一方で適応課題は言動や仕組みの背景に存在するため、認知がしにくい。また、自分や組織に根付いた考え方を自覚し、変更していくため、課題解決に時間がかかる。
まさに人事領域(人材育成や組織開発)は、「適応課題」の塊ではないか。
自分や他者との関係性や組織力学に対する深い理解がないと、解決できないことは多い。
単純にやれ「コミュニケーション」だ、「ロジカルシンキング」だ、「1on1」だと言ったところで変わりはしない。
会社やチームのカルチャーを変えることこそが極めて重要なこと。
こうした基盤のないところに家を建てることはできない。すぐ崩壊する。
「何をすればいいか」と単純に考えるのではなく、自分や自分と他者との関係性がどのように変化し、どの方向に向かうべきかをしっかり考えることが大切と思う。
政治の世界でも同様だろう。
頭のなかに、これは「技術的問題」か「適応課題」かをしっかり見極め、その両側面からアプローチすることが良い方向に向かうのだと思う。
これも、ウェルビーイング!
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